2章メソドロジ
人に魚を与えれば一日分の食事を与えられる。
人に漁を教えれば一生分の食事を与えられる。
中国の格言†1
[†1] 訳注: 授人以魚 不如授人以漁、人に授けるに魚を以ってするは、人に授けるに漁を以ってするに如かず。人に魚を与えるよりも、魚の釣り方を教えよ。『淮南子』に老子の言葉として書かれている。
私の技術者としてのキャリアの最初は未熟なシステム管理者だった。当時の私は、コマンドラインツールと指標のことだけを勉強していればパフォーマンスのことはわかると思っていたが、それは間違っていた。私は最初から最後までmanページを読み、ページフォールト、コンテキストスイッチ、その他さまざまなシステムの統計指標のことを学んだが、得られた知識をどう使ったらよいかがわからなかった。兆候、シグナルから解決方法を導くことができなかったのである。
そのうち、ベテランのシステム管理者たちは、ツールと指標からすぐに根本原因にたどり着くための自前の手順が頭のなかに入っていて、パフォーマンス障害が起きたときにはいつでもそれを使っていることに気づいた。彼らはどの指標が重要か、指標が問題と関連性があるのはどういうときか、調査対象を狭めるために指標をどのように使えばよいかを知っているのだ。manページにないのはそのノウハウだった。このノウハウは、ベテランの管理者やエンジニアの肩越しに作業を見て学ぶものだったのである。
それ以来、私はパフォーマンスのメソドロジ(方法論)を集め、文書化、共有し、自前のメソドロジを開発した。この章では、それらのメソドロジのほか、システムパフォーマンスの仕事をするために必要不可欠な概念、用語、統計、ビジュアライゼーション(可視化)の基礎を説明する。それらには、あとの章で実際に形にする前の段階の理論も含まれる。 ...
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