まえがき

知っていることがわかっているもの、Known-Knownsがある。

何かはわからないけれどもあることがわかっているもの、Known-Unknownsというものもある。

しかし、わからないこともわかっていないもの、Unknown-Unknownsというものもある。

―アメリカ合衆国国防長官(当時)ドナルド・ラムズフェルド、2002年2月12日

上の言葉は、プレスブリーフィングに出席した人々の嘲笑を誘ったが、地政学に限らず、あらゆる複雑系の重要原則をひとことで言い表している。パフォーマンス障害は、どこからでも発生する。そのなかには、システム内のまったく知識を持っていない領域、そのためチェックしていない領域も含まれる(Unknown-Unknown)。本書は、そのような領域の多くを明らかにするとともに、分析するためのメソドロジ(方法論)やツールも示していく。

今回の改訂版について

本書の初版を書いたのは8年前で、長く通用するように構成したつもりだ。各章は、最初の部分で長持ちするスキル(モデル、アーキテクチャ、メソドロジ)を取り上げ、そのあとで実際の例として短期間で変化していくスキル(ツールとチューニング)を取り上げるような構造になっている。ツールやチューニングの例は時代遅れになっても、長持ちするスキルが時代に追いつく方法を教えてくれる。

この8年でLinuxには拡張BPFという大きな機能が追加された。BPFは新世代のパフォーマンス分析ツールを支えるカーネルテクノロジである。この新版にはBPFの章とBPFツールを組み込み、別にBPFについて深く掘り下げた本も出版した[Gregg 19]。Linuxのperf、Ftraceにもさまざまな機能が追加されたので、それらについての章も追加した。Linuxカーネルに多数追加されたパフォーマンス機能、テクノロジの説明も取り込んだ。さらに、クラウドコンピューティングの仮想マシンを駆動するハイパーバイザーやコンテナテクノロジも、大きく変化しているので、これらについての記述も書き直した。 ...

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