1章何かが間違っている

何かが間違っていた。

組織内に信頼はなかった。重量級のソフトウェア開発プロセスは大きな妨げになっていて、もはやまったくコードを生み出せないほどだった。会社全体が死のスパイラルに陥っていて、7億5,000万ドルの事業全体が危機に瀕していた。

チームの中心的な開発者たちは優秀で、あなたもそのうちの1人だ。一方で、チームには経験の少ない開発者が含まれており、ほかにオフサイトのチームもあった。彼らはコードモンキー†1で、自分の機能を作ることだけしか目に入っていなかった。その機能が全体にどのように統合されるかについては考えておらず、彼らがしていたことのいくつかが短期間で大きな問題を引き起こし、そのあとさらに大きな問題を引き起こすことに気づいていなかった。

[†1] 訳注:アーキテクチャーや設計のことを考えずにただコードだけを書く人のこと

開発作業はとても賢くて経験豊富なプロの開発者がリードしていたのにも関わらず、作られたソフトウェアは良い標準には従っておらず、扱いづらいものだった。開発チーム全体は、技術プラクティスの背後にある理由を理解してはいなかった。しまいには、あっちで工程を省き、こっちで抜け道を使い、小さなサブチームや1人チームができあがった。異なる標準を使って作業を進め、システム全体は見ていなかった。これにより、コードの統合は、誰も楽しみにしていない悪夢のような体験になった。

あるいは、あなたはマネージャーの1人で、このソフトウェアを完成させ、出荷し、経費以上の売上を上げる責任があったとしよう。マネージャーたちも賢くて経験豊富だったが、結局、開発者と同じようにイライラしやる気を失った。この会社のマネージャーは、締切が変わって不安定なリリース候補が本番環境に投入されるのを見ていた。まるで開発者に正しいことをさせるために何を指示すればよいかわからないかのようだった。そこで経営陣は、多くのプロセスを追加する対応を取った。それがさらに信頼を損ね、締切がさらに変更となった。 ...

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