9章シーケンスと時系列データの理解

時系列はいたるところに存在します。天気予報、株価、そしてムーアの法則(図9-1)などの経時的トレンドで目にしたことがあるはずです。ムーアの法則とは、マイクロチップ上のトランジスタの数が2年ごとに約2倍になることを予測したものです†1。ムーアの法則は、約50年間にわたり、コンピューティング能力とコストの将来を正確に予測してきたことが証明されています。

[†1] 訳注:ゴードン・ムーアが1965年に発表した論文では、毎年2倍だった。1975年に2年ごとに2倍に修正され、以後これが現在まで維持されている。

ムーアの法則

図9-1 ムーアの法則

時系列データとは、時間的に間隔を空けて配置された一連の値のシーケンスです。通常プロットのX軸は、時間的な性質を持ちます。多くの場合、時間軸上には複数の値がプロットされます。例えば、この例ではトランジスタの数が1つのプロットで、ムーアの法則から予測される値がもう1つのプロットです。これを多変量時系列と呼びます。一方、値が1つだけ、例えば降雨量の時間変化などは、一変量時系列と呼ばれます。

ムーアの法則では、将来を大まかに予測する固定された単純なルールがあるため、予測は簡単です。このルールは約50年間維持されています。

しかし、図9-2のような時系列の場合はどうでしょう。

図9-2 実世界の時系列

この時系列は人為的に作られたものですが(その方法はこの章の後半で説明します)、株価チャートや季節の降雨量など、現実世界の複雑な時系列が持つ属性をすべて備えています。一見ランダムに見えますが、次の章で説明するように、予測を行う機械学習モデルを設計するのに役立つ共通の属性を、時系列は持ちます。 ...

Get 動かして学ぶAI・機械学習の基礎 ―TensorFlowによるコンピュータビジョン、自然言語処理、時系列データの予測とデプロイ now with the O’Reilly learning platform.

O’Reilly members experience books, live events, courses curated by job role, and more from O’Reilly and nearly 200 top publishers.