4章ディープラーニングによるマルウェア検出

人間の心というものは、とても魅力的な存在である。そして、私たちの潜在意識と無意識の力は信じられないほどのものだ。この力を実現させているのは、継続的に自己学習し、迅速に適応する、われわれの能力だ。この驚くべき人間の能力は、目の前にあるものが何であるかを判断する前に何十億ものタスクを計算できる。そして科学者は何十年もの間、人間の心のように同時に起こるタスクを処理できる機械、すなわち、膨大な数のタスクを効率的かつ信じられない速度で実行できるシステムを構築しようと試みてきた。機械学習の部分領域であるディープラーニングは、人間の心のように機能し、その構造に触発されたアルゴリズムの開発を支援するために生まれた。こうした手段はサイバー空間の脅威や攻撃に対する対策において有望な結果をもたらしているため、情報セキュリティの専門家もこの技術に興味を持っている。情報セキュリティの世界におけるディープラーニングの実装に最適な候補のひとつは、マルウェア対策である。

本章では、次の内容を取り扱う。

  • ニューラルネットワークの概要
  • Pythonを使った最初のニューラルネットワークの作成
  • ディープラーニングによるマルウェア検出器の開発
  • マルウェアの可視化手法と、畳み込みニューラルネットワークを使用したマルウェア検出器の開発

4.1 脳とニューロン

私たちの脳は一瞬の間に多数かつ複雑な機能を実現する。したがって、人間の脳と同じ技術を使用して学習・識別するアルゴリズムを使用するには、脳の仕組みを学習することが不可欠である。人間の脳がどのように機能するかについて学べば、ディープラーニングをより理解することができる。主要な3つの特徴的な脳のはたらきは次のとおりだ。

  • (分析、比較、判断などを)考える ...

Get セキュリティエンジニアのための機械学習 ―AI技術によるサイバーセキュリティ対策入門 now with the O’Reilly learning platform.

O’Reilly members experience books, live events, courses curated by job role, and more from O’Reilly and nearly 200 top publishers.