3章アルゴリズムとバイアスの排除

前の章では心理学の速修講座のようなスタンスで、人が決定を下す際、時としてバイアスがかかってしまう理由と、ありがちなバイアスの数々とを紹介しました。この章では、アルゴリズム(プログラム)を作った経験がまったくない読者を主な対象として、アルゴリズムについて解説していきます。具体的には、良好なアルゴリズムならどのように機能するのか、また、その過程で人間のバイアスをどう低減できるのかを明らかにします。

後続の章ではアルゴリズムに問題が生じる(つまりバイアスがかかってしまう)要因や経緯を述べ、さまざまな対処法も紹介しますが、それを理解するのにこの章で学んだことが役立つはずです。

3.1 アルゴリズムの簡単な例

この本で扱うアルゴリズムは「統計的なルール†1」であり、とくに「偏りのない決定」を目指したものです。しかしルールを用いて「偏りのない決定」をどのように実現するのでしょうか。

[†1] この本でこれ以降登場する「アルゴリズム」という言葉は、「統計的なルール、あるいはそれをコンピュータプログラムとして表現したもの」を表します。したがって、一般にコンピュータサイエンスで言うところの「アルゴリズム」よりも狭い意味で用いています。

統計的なアルゴリズムには複雑なものも多いのですが、その中では単純と言えるのが、「線形回帰分析」です。何らかの数値(たとえば、頭に生えている髪の毛の本数)を推定するもので、次のような形の式(一次式)で表現します。

y=c+\beta_{1} \cdot x_{1}+\beta_{2} \cdot x_{2}+\beta_{3} \cdot x_{3}

推定したい数値を表す変数を「 ...

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