20章機械学習を採用するべき時
まずはコンピュータが、やがてインターネットが登場して、世界は根底から変わってしまいました。同様に機械学習の登場により突如としてほぼすべての分野にアナリティクス(データの中に意味あるパターンを見出し、解釈し、伝達する技術)を応用できる世の中になりました。これだけ急激な変化が起きると、私たち人間は自然と興奮状態に、いや熱狂状態にさえ陥ってしまう傾向があるので、時には一歩下がって深呼吸をし、大局的な見地に立って全体像を眺める必要があります。
20.1 ナイロンと木綿
私が1995年にドイツのギーセン大学でマーケティングの講義を受けた時、担当教授が使った図は、1960年代に作成され、さまざまな種類の繊維を例に取って製品のライフサイクルを示したものでした。
その図で、木綿は晩年の「衰退期」にありましたが、ナイロンは急速な「成長期」にさしかかったところでした。読者の皆さんは教授とは違って(教授はもう20〜30年前にはこの地球を去り、今では空のはるかかなたで火星人の調査をしているでしょう)、この過熱したナイロンブームが短命に終わったことに気づかれたと思います。木綿は早くも1970年代に人気を回復し、ナイロンはもはや(パラシュートや冬の防寒着など)長所が欠点に勝る一部の製品にしか使われていません。
20.2 機械学習はナイロンと同じ運命をたどる?
昨今の機械学習ブームも、こうしたナイロンのたどった運命を念頭に置いて見守るべきなのです。機械学習の長所についてはこのすぐあとで述べますし、「機械学習が今後ますます普及し、ストッキングや冬用ジャケットなど限られた製品にしか使われなくなってしまったナイロンに比べればはるかに広範な用途に使われるであろうこと」は私も確信しています。 ...
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