23章大規模組織におけるバイアス予防の慣行化
私がコンサルタントになってまず思い知ったこと、それは「名案は容易に思いつく。だがその名案を実行に移すのが至難の業」でした。読者の中にはここまで、22の章を読み、アルゴリズミックバイアス対策のアイデアで頭がいっぱい、という人もいるでしょう。
でも、そうしたすばらしいアイデアをどう実現しますか。とくにあなたが何百人ものデータサイエンティストを率いる管理者で、部下のひとりひとりが期日に追われ、自信過剰バイアスを多分に持ち合わせた生身の人間、という状況なら?
この章では、ここまでの各章で解説してきたバイアスの予防・排除法を現実の組織で慣行化するための具体的なステップを7つ紹介します。各ステップでの焦点の当て所は次のとおりです。
- データのフローとウェアハウジング
- 標準とテンプレート
- 中庸の重要性
- キャリブレーション
- モデルの検証
- モデルの監視
- バイアスのないデータの継続的な生成
23.1 ポイント1 データのフローとウェアハウジング
我々は「機械学習の時代」を生きているのかもしれません。あるいは「CDOの時代」と呼んでもよいかもしれません。CDOとはChief Data Officer、つまり「最高データ責任者」のことで、新たな鉱脈(すなわちデータ)にたどり着くための道を確保する目的で多く組織が続々と採用しつつある新たな役職です。
この本では随所でデータの重要性を強調してきました。モデルをバイアスとは無縁のものとするために、CDOにはデータの質に対する投資が求められます。それにはとくにデータの流れの制御とその自動化の促進(ウェアハウジング)が不可欠です。たとえば、データの「完全性」を確保し「唯一の真実(single ...
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