1章コマンドラインの基礎

コンピュータのコマンドラインインタフェースにより、我々はオペレーティングシステム(OS)と直接対話することができる。OSの中では驚くほど多種多様な機能が息づいており、それらは数十年の長きにわたって用いられ、また開発されてきた中で洗練されて完成の域に達している。しかし残念なことに、コマンドラインを用いてOSと対話する技術は早晩失われていくであろう。代わって台頭したGUIは、利便性を高める代わりに柔軟性や速度を犠牲とし、さらにユーザをこうした技術から遠ざけてきた。

一方、コマンドラインを効果的に操る技術は、セキュリティを志す者、セキュリティを司る者にとって不可欠である。Metasploit、Nmap、Snortといった数多くのツールを操る上で、コマンドラインに習熟していることは必須といってよい。ペネトレーションテストの際にターゲットのシステムを操作する上で、特に侵入の初期段階ではコマンドラインインタフェースが唯一の術であることも少なくない。

しっかりとした基礎を築く上で、まずはコマンドラインと関連する技術の概説から始めたい。ついで、サイバーセキュリティ技術向上のために、これらの技術を活用する方法について見ていこう。

1.1 コマンドラインの定義

本書全体を通じて、コマンドラインという用語はOSにインストールされたGUIを持たない各種実行ファイル、特に組み込みコマンド(built-in)、予約語(keyword)、シェルから利用可能なスクリプト機能、コマンドラインインタフェースを備えたものを示す用語として用いる。

コマンドラインを効果的に活用する上では、2つの事項を理解する必要がある。ひとつはコマンドの特徴やオプションの理解、もうひとつはスクリプト言語により複数のコマンドを組み合わせて順次実行させる方法である。 ...

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