監訳者まえがき
3年前に出版された『プログラミングTypeScript』(オライリー・ジャパン)に続き、大好きなTypeScriptの本の監訳のお仕事をいただけたことを、たいへん嬉しく思います。3年前、TypeScriptはすでにWeb開発において非常に人気のある言語でしたが、その後も高い人気は維持、強化され、この3年間でさらにその地位を確固たるものにした印象があります。また、機能面の進化もとどまることなく、JavaScriptの最新の標準仕様を随時取り込みつつ、さまざまなユースケースでの型推論の改善のような基礎的なものから、本書でも紹介するテンプレートリテラル型のような高度なものまで、継続的な改善が行われており、TypeScriptは3年前よりさらに素晴らしい言語になっています。そしてその進化は、今後も続くでしょう。新しくJavaScriptプロジェクトを始めるとき、開発言語としてTypeScriptを採用しない理由は、私にはほとんど思いつきません。まさに「TypeScriptに賭けろ」です。
TypeScriptは、JavaScriptという非常に柔軟な使い方をされる既存の動的型付き言語から派生した、静的型付き言語です。それゆえに、おそらくただの静的型付き言語であれば過剰であると見なされて実装されなかったであろうレベルの、高度な柔軟性を獲得してきました。JavaScriptで一般的に使われるパターンを型として表現できなければ、TypeScriptの存在意義はなかったからです。本書は、読者がJavaScriptに関する最低限の知識を持っていることを前提としますが、TypeScriptを書き始めようとされる方の中には、すでにほかの静的型付き言語の経験のある方もいらっしゃると思います。そのような方は、雰囲気でTypeScriptをある程度書けてしまうのですが、私の経験では、TypeScriptの高度な機能を使いこなせる方はあまり多くありません。ですから、ほかの静的型付き言語の経験のある方にも、ぜひ本書を手に取っていただいて、TypeScriptの型システムに特有の柔軟な機能の数々をじっくり学んでいただけたらと思います。 ...