第6章複数チームの管理

この章では複数のチームの管理について解説します。「管理者たちの管理」よりも先に「複数のチームの管理」に焦点を当てる理由は「この2つの仕事に関連性はあるが、必ずしも同時に行うとは限らないから」です。ともかくあなたの下には直属のテックリードが少なくとも3、4人はいて、そのテックリードが各自のチームの作業をきちんと把握するための支援をあなたが同時並行で進めているはずです。このことが示唆するのは、ある重要な状況――つまり「あなたはもう(プロダクション)コードをあまり(あるいはまったく)書いていない」という状況です。

私が前職で(パーティードレスのレンタルサイト「レント・ザ・ランウェイ(Rent the Runway: RTR)」のCEOとして)エンジニアの肩書きと職務内容を規定した際、エンジニアが複数の大きなチームの管理を初体験する職位は大抵「技術部長(director of engineering)」でした。その「技術部長」の職務記述書ジョブディスクリプションの一部を以下に紹介しましょう。

技術部長は技術チームの重要な職務に関する責任を担い、通常、複数の製品分野または複数の技術部署のエンジニアを統率する。テックリードにとっても、部下をもたないエンジニアにとっても、この技術部長が直属の上司となる。

技術部長にとって日常レベルでコードの作成作業に携わることは職務上の義務ではないが、全社レベルの技術力を維持、強化する責任を負っており、必要に応じて研修や人材採用によりチームの技術力を強化するものとする。技術部長は優れた技術的経歴と実績をもつ者が務めるべきであり、執務時間の一部を充てて最新技術に関する調査を行い、IT業界の最新動向を常時把握する。また、技術部長はデバッグや問題を抱えたシステムのトリアージ(優先度付け)を支援し、監督するシステムについては、必要に応じてコードレビューや問題の調査の支援ができるほど十分に理解していなければならない。アーキテクチャとデザインに関わる作業には、主として、チームのエンジニアに事業や製品についての質問を投げかける「事情に明るいベテラン技術者」として貢献し、チームで作成中のコードが製品や事業のニーズに合致することと、そうしたニーズが増大した場合に適宜システムの規模を拡張できるよう万全を期するものとする。 ...

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