ステップ3多次元正規分布

これまで私たちが見てきた正規分布は、1つの実数値(スカラ)に関する正規分布でした。ここでは、複数の実数値からなるベクトルに関する正規分布、すなわち「多次元正規分布」について見ていきます。本ステップでは初めに、ベクトルや行列などの基礎知識について復習します。その後に、多次元正規分布を対象に、可視化や最尤推定の方法について学びます。

3.1 NumPyと多次元配列

本書ではこれ以降、ベクトルや行列が多く登場します。ここではそれらについて復習し、本書を読み進めるための準備をします。

3.1.1 多次元配列

多次元配列とは、複数の値(要素)をまとめて扱うためのデータ構造です。要素の並びには“方向”があり、その方向は「次元」や「軸」と呼ばれます。図3-1に多次元配列の例を示します。

スカラ、ベクトル、行列の例

図3-1 スカラ、ベクトル、行列の例

図3-1は、左から順に、0次元配列、1次元配列、2次元配列です。それぞれ「スカラ」「ベクトル」「行列」と呼ばれます。スカラは単に1つの数を表します。ベクトルは1つの軸に沿って数が並び、行列は2つの軸に沿って数が並びます。行列では、横方向の並びを行(row)と言い、縦方向の並びを列(column)と言います。図3-1の行列は「3行2列の行列」と呼び、また「の行列」と表記します。

多次元配列はテンソルとも呼ばれます。図3-1の例は、左から順に0階テンソル、1階テンソル、2階テンソルと呼ばれます。

ベクトルは単純な概念ですが、ベクトルを表現するには2つの方法がある点に注意が必要です。 ...

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