3章ブランチ

Gitユーザーは、ブランチによってソフトウェアプロジェクト内に新しい開発ラインを立ち上げられるようになる。ブランチを作るとは、プロジェクトのタイムラインに含まれるある特定の状態から分岐を作ることだ。こうすると、開発は同時に複数の方向に進めていけるようになる。これはタイムトラベルと考えることができる。同じ出発点から別のパラレルなタイムラインを作れるということだ。ブランチは、同じプロジェクトのなかで複数の異なるバージョンを作れるようにする。もっとも、ブランチはほかのブランチと調整、マージして、複数の異なる作業の成果を1つにまとめられることが多い。

Gitでは、ブランチの作成は軽くてコストのかからない操作だ。それは、ブランチがGitリポジトリ内の特定のコミットオブジェクトへのポインタにすぎないからである。Gitは多数のブランチを作ることを認めているため、1つのリポジトリのなかに同時に多数の異なる開発ラインが共存できる。さらに、Gitのブランチのマージサポートは1級品だ。そのため、ほとんどのGitユーザーはブランチを日常的に使っており、ブランチの多用は自然な形で奨励されている。

この章では、開発者たちが同じプロジェクトのなかで複数の開発ラインを維持する方法を示すことを通じて、ブランチがGitでどのように機能するかをトップダウンのアプローチで考えていく。この章で説明することは、「2章 基本コンセプト」で学んだことを補完することになる。

この章では、ブランチのリストと内容の表示、選択、作成、削除の方法を示す。また、ブランチが時間の構造を壊し、パラレルなタイムライン†1の存在を台無しにするようなことを防ぐためのベストプラクティスも示す。

[†1] 私たちはタイムトラベルの逆説とタイムトラベルが引き起こす複雑さを意識しているので、タイムラインのことを想像するだけにとどめ、実際のタイムトラベルには踏み込まない。 ...

Get 実用 Git 第3版 now with the O’Reilly learning platform.

O’Reilly members experience books, live events, courses curated by job role, and more from O’Reilly and nearly 200 top publishers.