実用 Git 第3版

付録AGitの歴史

クリエーティブで注意力の行き届いた人は、今どきバックアップ戦略なしでプロジェクトをスタートさせたりはしない。データははかない存在で間違ったコード変更や致命的なディスククラッシュなどで簡単に失われてしまう。仕事全体を収める生きたアーカイブを管理するに越したことはない。

テキストやコードのプロジェクトのバックアップ戦略では、バージョン管理、すなわちリビジョンの追跡と維持が必要とされる。個々の開発者が毎日数個のリビジョンを作るなかで、拡大の一途をたどるコーパスは、リポジトリ（収納庫）、プロジェクトの歴史を伝える書物、コミュニケーション媒体、チームとプロジェクトの管理ツールを兼ね備えたものでなければならない。その重要性を考えるなら、バージョン管理システムはプロジェクトの作業習慣や目標に沿って調整されたときにもっとも効果的なものになる。

ソフトウェアなどのコンテンツのさまざまなバージョンを管理、追跡するツールは、一般にバージョン管理システム（version control system：VCS）、ソースコードマネージャー（source code manager：SCM）、リビジョン管理システム（revision control system：RCS）など、リビジョン、バージョン、コード、コンテンツ、管理、システムといった単語を並べて作った名前で呼ばれている。個々のツールの開発者やユーザーは難解な議論を展開しているかもしれないが、これらのシステムはどれも同じ問題に取り組んでいる。コンテンツのリポジトリを作成、維持し、個々のデータの過去の姿を復元できるようにし、すべての変更を記録するということだ。本書では、この種のシステムの総称的な名前としてバージョン管理システムという言葉を使っている。 ...