17章ステージ3:拡散
1997年にベンチャーキャピタルのDraper Fisher Jurvetson社が、ネットワークに支えられたクチコミ現象を表す「バイラルマーケティング」という言葉を最初に使った†1。この会社は、Hotmailのバイラル(拡散)の力を目の当たりにしたのである。Hotmailのすべてのメールには、ウィルス感染の媒介が記載されていた。今では有名となった「アカウントの取得を促すリンク」である。
数十年前にマーケティング科学の創始者のひとりであるフランク・バス《Frank Bass》が、メッセージが市場に広がる様子について述べている†2。1969年の論文「A New Product Growth Model for Consumer Durables」†3では、メッセージがクチコミによってどのように市場に浸透するかが説明されている。最初はゆっくりと広がり、それについて話す人が増えると、急速に広がっていくのだ。だが、メッセージを聞いた人が増えすぎると、市場は飽和し、広がる速度も落ちていく。このモデルは図17-1のようなS字で表され、「バスの普及曲線」として知られている。
研究者たちがHotmailの広がりをバスのモデルの予測と比較したところ、ほぼ完全に一致したそうだ。
拡散ステージでは、ユーザー獲得や成長にフォーカスする。ただし、定着にも注意を払う必要がある。
- エンゲージメントを犠牲にして、拡散やクチコミを構築するにはリスクが伴う。アーリーアダプターとは違う新規ユーザーを増やしていくと、それによってアーリーアダプターが離れてしまうのだ。あるいは、マーケティング活動でUVPが失われてしまい、アーリーアダプターとは異なる期待を新規ユーザーに抱かせてしまう。
- 定着から早く離れすぎないように注意したい。ユーザーの増加に投資しても、チャーンが高いままであれば、十分な投資収益率が得られない。早すぎる成長はお金や時間のムダだ。すぐにスタートアップがダメになる。 ...
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