2章モデルから実運用へ

 「1章 ディープラーニングへの旅路」ではコードを示した。しかし、コードはディープラーニングを実際に運用するプロセス全体から見れば、ごく一部にすぎない。本章ではコンピュータビジョンを例にとって、ディープラーニングアプリケーションを構築する過程をはじめから終わりまで見ていく。具体的には「クマ検出器」を構築してみる。その過程で、ディープラーニングの潜在能力と制約について説明し、データセットの作り方や、ディープラーニングを実際に運用する際に起こり得る問題などを見ていく。ここで紹介する重要な点のほとんどは、「1章 ディープラーニングへの旅路」で見たような他のディープラーニング問題にも適用できる。読者が対象とする課題が、ここで示す例題と共通の問題を持つものであれば、少量のコードで素晴らしい結果が得られるだろう。

 まずは、問題の捉え方からはじめよう。

2.1 ディープラーニングの実際

 これまでに見たように、ディープラーニングを用いると少量のコードで難しい問題を容易に解くことができる場合がある。これはスイートスポットのようなもので、本書に例題として示した問題によく似た問題であれば、簡単に素晴らしく有用な結果を得られる。しかし、ディープラーニングは魔法ではない! 前章で示した6行のコードですべての問題が解けるわけではない。

 ディープラーニングの制約を過小評価し、潜在能力を過大評価すると、ひどい結果に悩まされることになる。経験を積んで発生した問題を解決できるようになれば話は別だが。逆にディープラーニングの制約を過大評価し、潜在能力を過小評価すると、実際には解決できる問題なのに、試さずに諦めてしまうことになる。

 制約を過小評価する人もいれば、潜在能力を過小評価する人もいる。これはどちらも良くない。潜在能力を過小評価すると、非常に有用な問題なのに挑戦すらしないことになるし、制約を過小評価すると、重要な問題点を考慮せず対応できないことになる。 ...

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