訳者まえがき
本書は、“Dustin Boswell and Trevor Foucher, The Art of Readable Code, O'Reilly Media, Inc., 2011”の全訳である。底本には書籍とSafari Books Onlineの電子版を使用した。
面白いと、読みやすいは、違うんだよ?
タイトルが示すとおり、本書のテーマは「読みやすいコード」である。「読みやすい」と聞いてすぐに思い浮かぶのは、島本和彦『アオイホノオ』(小学館)7巻に出てくるセリフだ(くしくも原書と同じ2011/11に発売されている)。
「面白いと、読みやすいは、違うんだよ?」
「読みやすい」コードを書くのに「面白い」ことをする必要はない。いい名前をつける。適切なコメントを書く。意味のある単位に分割する。キレイに整形する。こうした基本的なことを着実にやればいい。このことを丁寧に説明してくれるのが本書である。
あまりにも基本的なことなので、地味な内容じゃないかと心配された人がいるかもしれない。Amazon.comには「Nothing New(別に普通じゃん)」とのレビューもある。でも、心配しなくていい。本書は「面白い」。
やらんもんは…勝たれへん!!
本書が面白いのは、アドバイスの仕方がいいからだと思う。よくありがちな「コードはこう書きなさい」という説教じみたものじゃなく、かといってふざけたものでもなく(挿絵はふざけてるけどな!)、先輩から「こうしたほうがいいよ」と優しくアドバイスを受けているような感じがする。説明用のサンプルコードも豊富だし、今日からすぐに使えるヒントも満載だ。
また、あれだけのアドバイスが詰まっていながら、200ページ以内に収まっているというのもいい(訳書は200ページを超えてしまったけど……)。持ち運びに便利だし、これなら読み返そうと思ったときに楽に取り出せる。誰かにコードの書き方を教えたことがある人ならわかると思うけど、これは本当にすごいことだ。 ...