訳者まえがき
最初にこの本を読んだときは、「Modern Linux」というタイトルの通りモダンな、すなわち最新の情報があるため楽しく読み進めることができました。そしてこれは新人からベテランまで多くの方に読んでほしいと思いました。
この本の構成は、各章の前半は一般的なもので、後半は最新の情報となっています。前半はLinuxエンジニアなら誰でも必要な情報です。後半は知らないことが多くあるかもしれません。ベテランエンジニアであるほど、業務が忙しく、最新の情報には疎くなりがちです。そのため各章の後半は、誰でも興味深く読むことができると思います。
またこの本の特徴の1つは、全体の内容が基本的であるにもかかわらず、2章にカーネルがあることです。カーネルについて実装レベルの知識は必要ありませんが、Linuxがどのような動きをするのか、どのような機能があるのかを知っているだけで、エンジニアとしての質が向上し、先を見通したシステム設計やプログラミングができると思います。
なお、原書のサブタイトルは、「クラウドネイティブな実践者のためのハンドブック」(A Handbook for the Cloud Native Practitioner)ですが、決してクラウドに特化した内容ではありませんし、ほとんどが組み込み分野でも必要なものとなっています。
具体的な例を挙げると、最近は組み込みでも仮想化やコンテナは使われています。8章のStatsDは、Androidのモジュラーシステムコンポーネントとして含まれています(https://source.android.com/docs/core/architecture/modular-system/statsd)。スマートフォン以外の組み込み機器も高機能になり、RTOSからLinuxへ切り替えられ、フルHDのグラフィックやネットワークへの接続もします。サーバで必要な機能が組み込みでも必要となってきています。 ...