Rustの練習帳 ―コマンドラインツールの作成を通してRustを学ぶ

まえがき

エンディングはすでに知っている / それは観客が涙した瞬間さ

—— They Might Be Giants, "Experimental Film" (2004)

1995年に「JavaScript」が登場したときのことを今でも覚えています。それから数年後、筆者はJavaScriptを学ぶために、大きくて厚い本を買って隅々まで読みました。その本は良い本で、文字列やリスト、オブジェクトなどについて詳細に説明していました。しかし、その本を読み終えても、JavaScriptを書けるようにはなりませんでした。そのとき初めて、プログラムを書いて知識を応用しない限り、学びが少ないことに気がついたのです。それ以来、プログラマーにとってもっとも価値のあるスキルである「言語の学び方」を身につけました。筆者の場合、学んでいる言語で○×ゲームのような既知のプログラムを書き直すのが学習に効果的でした。

Rustは比較的新しい言語なので、みなさんは好奇心から本書を手に取ったのかもしれません。本書は、Rustのリファレンス本ではありません。リファレンス本は、すでに優れたものが存在するので必要ないでしょう。その代わり、身近な小さなプログラムをたくさん書く本にしました。Rustは学ぶのが難しい言語だと言われていますが、小さなプログラムをたくさん書くことで、すぐに上達できるでしょう。

本書では、Rustを使ってheadやcalなどのUnixコマンドを書いていきます。こういったコマンドを書くことで、文字列、ベクタ、ファイルハンドルのような概念を学ぶことができます。それだけでなく、プログラムの終了コード、コマンドライン引数、リダイレクト、あるプログラムの出力（STDOUTまたは標準出力）を別のプログラムの入力（ ...