8章OSプリミティブ

これまでは、ほとんどノンブロッキングな操作のみに焦点を当ててきた。しかし、Mutexや条件変数のように、他のスレッドがアンロックもしくは通知してくれるのを待機するものを実装したければ、効率的に現在のスレッドをブロックする方法が必要だ。

「4章 スピンロックの実装」で説明したように、OSの助けがなくてもスピンすることで実装することもできるが、スピンでは条件の確認を何度も繰り返し行うため大量のプロセッサ時間を簡単に浪費してしまう。効率的にブロックするには、OSのカーネルの助けが必要だ。

カーネル(正確にはカーネルの一部であるスケジューラ)は、プロセスもしくはスレッドが、いつ、どのくらいの長さ、どのプロセッサコアで実行されるかを決定する役割を果たす。スレッドが、何かが起こるのを待っている間は、カーネルはそのスレッドにプロセッサ時間を割り当てるのをやめ、他のスレッドを優先して貴重な資源を有効に利用できるようにする。

カーネルのこの機能を利用するには、カーネルに対してあるスレッドが何かを待っていることを知らせ、その何かが発生するまでスレッドをスリープさせるように依頼する方法が必要になる。

8.1 カーネルとのインターフェイス

カーネルとやり取りする方法はOSによって大きく異なるし、OSのバージョンによって異なる場合もある。一般に、OSとのやり取りはライブラリの背後に隠れていて詳細は見えない。例えば、Rustの標準ライブラリを用いると、OSのカーネルインターフェイスの詳細を知らなくても、File::open()を呼ぶだけでファイルをオープンできる。同様にCの標準ライブラリlibcを用いると、標準関数fopen()を呼ぶだけでファイルをオープンできる。このような関数を呼び出すと、最終的にはOSカーネル呼び出し、すなわち ...

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