16章RNNと注意機構による自然言語処理

Alan Turingが1950年に有名なチューリングテスト(https://homl.info/turingtest†1を考えた目的は、機械が人間の知性にどれだけ追いつけるかを評価することだった。検証方法としては、写真のなかの猫を見分けられるか、チェスを指せるか、音楽を作曲できるか、迷路から抜け出せるかなど、さまざまなものが考えられたはずだが、彼が選んだのは言語を操るタスクだった。もっと具体的に言えば、彼は人が機械と話しているのにそうだとは気が付かないようなチャットボットを考え出したのである†2。このテストには弱点がある。無防備な人やあまり頭のよくない人を騙せる定石のような質問があるのだ(たとえば、質問に特定のキーワードが含まれていれば、あらかじめ用意されたあいまいな答えを返す、おかしな返答をごまかすために冗談を言っているふりや酔っ払っているふりをする、難しい質問を投げかけられたときに、質問を返して回答を避けるなど)。そして、人間の知性のさまざまな側面(たとえば、顔の表情といった言語によらないコミュニケーションの解釈能力とか、手作業を学習できることとか)を無視している弱点もある。しかし、このテストは、言語の習得が人類の持つもっとも重要な認知能力であることを強調している。私たちは自然言語を読み書きできる機械を作れるだろうか。

[†1] Alan Turing, "Computing Machinery and Intelligence," Mind (1950): 433-460.

[†2] もちろん、チャットボット(chatbot)という言葉が生まれたのはもっとあとである。彼は自分のテストを模倣ゲーム(immitation game)と呼んでいた。機械Aと人間Bが人間の質問者Cとテキストメッセージで会話する。質問者は、AとBのどちらが機械かを見破るために質問を投げかける。人間Bが質問者を支援しているにもかかわらず、機械が質問者をだませれば機械の勝ちである。 ...

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