SLO サービスレベル目標 ―SLI、SLO、エラーバジェット導入の実践ガイド

1章信頼性スタック

Alex Hidalgo

私たちが今生きているのは、サービスの世界です。この世界には、サービスとしてのネットワーク（Network as a Service）や、サービスとしてのインフラストラクチャ（Infrastructure as a Service）を販売するベンダーがいます。料金を払えばサービスとしての監視（Monitoring as a Service）や、サービスとしてのデータベース（Database as a Service）の購入も可能です。さらに、それらをまとめてもっとも広く使用されているSaaSというキーワードも存在します。この頭字語は、サービスとしてのソフトウェア（Software as a Service）、サービスとしてのセキュリティ（Security as a Service）、サービスとしての検索（Search as a Service）、またはサービスとしてのストレージ（Storage as a Service）など、多義的な使い方がされるようです。

一方、多くの組織はマイクロサービスアプローチに目を向けるようになってきました。このアプローチでは、機能を多くの小さなサービスに分割し、それらのサービスがすべて相互に通信し、相互に依存してサービスを提供します。このようにシステムは、年ごとに複雑になって分散化が進み、より深遠になっています。

現在は、何もかもがサービスであると思われています。そもそもサービスとは何なのかを定義することさえ困難な段階に達しています。小売のWebサイトを運営している人なら、ユーザー認証や決済システム、ユーザーがショッピングカートに入れた商品の追跡などの処理を、マイクロサービスによって処理していることでしょう。しかし、小売のWebサイトが多くの小さなコンポーネントで構成されているにもかかわらず、ユーザーにとってはそれら全体が1つのサービスであることは明らかです。 ...