はじめに

書名だけ見れば、本書の主題はサービスレベル目標(SLO)です。しかし、それを深く掘り下げてみると、本書の主題は人間です。以降に続く各ページで紹介される理論、原理、およびアプローチのすべては、人々の生活を容易にし、できればより良いものにするために存在するのです。

本書では多くのトピックを取り上げて検討する予定です。その中には原理にかなり深く関わるものや、数学と数式を多用する話もあります。また、ソフトウェアに着目するかと思えば、プロセスに着目するものもあります。それらのすべての主題は、最終的には人です。そこで、最初にその点に関する実話を紹介したいと思います。

完璧である必要はない

本書の執筆に同意したすぐ後、私はニューヨークで散髪していました。私がいつもお願いしているスタイリストは、私と同じ時期にヴァージニア州のリッチモンドに住んでいた人でした。私たちは、その当時に会ったことはありませんが、2人が同じような場所に出入りしていたことがすぐに判明しました。さらに、共通の知り合いが多くいることがわかるまでに、3分間もかかりませんでした。私たちはすぐに意気投合しました。

Mollyは素晴らしいスタイリストで、髪を切ってもらいながら、いつも楽しくおしゃべりをしていました。しかし、このときが彼女がデトロイトでコーヒーショップを開くためにニューヨークを離れる前に、私が彼女にしてもらった最後の散髪になりました。私は彼女を深く信頼していたので、その後の4ヵ月間は、他のスタイリストを探すことも、次の散髪を受けることもしませんでした。

このとき、私は本を書く契約にサインしたと話しました。すると彼女は、何についての本なのかと尋ねました。そこで私は、本書の1章で書いたことと同じ言葉を使って、次のように説明しました。「あなたは完璧であることはできませんし、いずれにしても誰もあなたが完璧であることを必要としていません。完璧であろうとすることはコストがかかりすぎます。このことを受け入れれば、最終的には誰もが満足できるようになります」。 ...

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