4章トライブでスケールさせる
自律した小さなチームは素晴らしい。けれど、彼らにもできないことがひとつある。それは、スケールすることだ。小さなチームでうまくいっていることをどうやって全社レベルにスケールさせるのか? それがこの章のテーマだ。
この章ではトライブ(Tribe)、チャプター(Chapter)、ギルド(Guild)といった単位のチーム編成について学ぶ。これらを学ぶことで、権限付与と信頼によるスタートアップ感を維持しながら、全体としてもっと大きな物事に同時並行で取り組めるようになる。
4.1 スケーリングの課題
スケーリングは手ごわい。スケールさせることは、プロダクトマーケットフィットを果たしたテック企業が直面する最大の課題のひとつだ。この段階では急速な成長と人材採用が求められる。テック企業はみんな、チームを小さく身軽なものに留めておきたいと考えている。規模を拡大するにしても、自分たちがその居場所を奪おうとしている既存企業のように、肥大化して動きが鈍くなることは避けたい。
テック企業が求めているのは、両者の「いいとこ取り」だ。小さいチームのままスタートアップのように働きながらも、企業規模の拡大と成長による効率性と影響力を獲得したい。
Spotifyのこの問題への取り組みのひとつが、メンバーをトライブ、チャプター、ギルドという単位で構成することだった。まず、このモデルの基本的な原則を見てから、具体的な仕組みを説明しよう。
4.2 スケーリングの原則
Spotifyは、トライブ、チャプター、ギルドという組織モデルを考える際に、次の原則を念頭に置いていた。
ひとつずつ詳しく見ていこう。
スクワッドを第一に考える
Spotifyは、最高のチームを擁する企業が勝つと信じている。そのため、Spotifyはスクワッドの立ち上げに多大な時間とエネルギーを費やす。スクワッドこそがクリエイティビティの源泉であり、プロダクトが作られる場所だ。スクワッド以外の組織構造(トライブ、チャプター、ギルド)はどれも、スクワッドの支援と調整のために組まれた「足場」だ。チームの成功を助ける協働と貢献は、個人の成果よりも評価される。Spotifyは、高パフォーマンスなスクワッドを育成することが、企業として取り組むべき一番大事な仕事だと考えている。すなわち、スクワッドが高パフォーマンスを発揮できるようにサポートし、新たな人材を採用し、雇った優秀なメンバーが辞めずに働き続けてくれるような環境を整えること。これが彼らの至上命題だ。 ...
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