付録D行列代数

行列代数(matrix algebra)とは、行列(matrix)についての演算を定義する、数学の一分野です。行列とは、一連の数値を行と列に配列したものです。行列代数は、科学や工学でさまざまな用途に使われるだけでなく、これを使うとグラフィック処理の計算をきわめて効率よくできます。この付録の目的は、SVGが「舞台裏」で利用している行列代数についての基本的な概念を紹介することです。

D.1 行列に関する用語

行列は、その(row)の数と(column)の数で表現されます。図D-1は、2週間にわたる毎日の気温を、7つの列から成る2つの行に配列した行列を示しています。この行列は、2行7列の行列(2×7行列)と呼ばれます。行列を記述するときには、角括弧で囲みます。

毎日の気温を表す2行7列の行列

図D-1 毎日の気温を表す2行7列の行列

このほかに、行列の演算を扱うときに出てくる用語がいくつかあります。正方行列(square matrix)は、行と列の数が等しい行列です。ベクトル(vector)あるいは行ベクトル(row vector)は1つの行だけを持つ行列であり、列ベクトル(column vector)は1つの列だけを持つ行列です。行列内の個々の数値は成分(entry)と呼ばれ、通常の数値は専門用語でスカラー(scalar)と呼ばれます。さあ、次のパーティーにこれらの話題を持って出かけましょう。驚かれること間違いなしです。

行列の概念をSVGに適用すると、x座標とy座標の組を、2行1列の行列として表現することができます。これは、座標を表現するために最終的に行き着く方法ではありませんが、理解しやすいので、手始めにはよいでしょう。この表現方法では、(3,5) ...

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