マスタリング・ライトニングネットワーク ―ビットコインの迅速な支払いを実現するセカンドレイヤーブロックチェーンプロトコル

3章ライトニングネットワークの仕組み

Aliceがライトニングウォレットのセットアップを行い、Bob's Cafeでコーヒーを購入するまでの流れを追ったところで、その裏側を覗いて、このプロセスに関与しているライトニングネットワークのさまざまな構成要素を詳しく見ていきましょう。本章では全体像を確認することにし、技術的な詳細には踏み込みません。ここでの目標は、ライトニングネットワークの最も重要な概念と構成要素を知ってもらうことにあります。

コンピュータサイエンス、暗号技術、ビットコイン、プロトコル開発の経験がある場合は、細部を自分で補いながら本章の内容を十分に理解できるはずです。そのような経験がなくても、本章で十分な概要を提供するので、BOLT（Basis of Lightning Technology）と呼ばれるプロトコルの正式な仕様を理解するのが楽になるはずです。まったくの初心者である場合は、本書の技術的な章を理解する上で本章の内容が助けになるでしょう。

ビットコインの基礎を復習しておく必要がある場合は、付録Aに次の内容のまとめがあるので参考にしてください。

• 鍵とアドレス
• ハッシュ関数
• デジタル署名
• トランザクションの構造
• トランザクションのインプットとアウトプット
• トランザクションチェーン
• ビットコインスクリプト
• マルチシグアドレスとマルチシグスクリプト
• タイムロック
• 複雑なスクリプト

まず、「ライトニングネットワークとは何か」に関する定義を1つの文にまとめます。そして本章の残りの部分では、この定義を細かく分解していきます。

ライトニングネットワークとは、ビットコインブロックチェーンでスマートコントラクトとして実装されるペイメントチャネルのピアツーピアネットワークであると同時に、参加者がこれらのスマートコントラクトをセットアップして実行する方法を定義する通信プロトコルのことである。 ...