1章

事業活動を分析する

 みなさんはコードを書くのが好きですよね。私も大好きです。難しい課題に挑戦し、すっきりとした解法を見つけ、それを見通しのよいわかりやすいコードに仕上げるのは本当に楽しいことです。みなさんがドメイン駆動設計に興味を持つのは、それが理由だと信じています。つまり、もっとうまくコードを書けるようになりたいから、ドメイン駆動設計に興味を持っているはずです。しかし、この章ではコードを書くことには触れません。この章で学ぶのは事業活動です。つまり、なぜその事業を行うのか、その事業で何を目指すのか、そして事業目標を達成するためにどういう方針で行動するのか。それがこの章で学ぶ内容です。

 私が講師をしているドメイン駆動設計の講座でこの内容の説明を始めると、「私たちはソフトウェアを書くのが仕事です。事業経営をしているわけではありません。これを学ばないといけないんですか?」という質問が必ずでてきます。その答えははっきりしています。必要です。役に立つ解決策は課題を理解するところから生まれます。私たちソフトウェア開発者にとっての課題はどんなソフトウェアを作るかです。そしてどんなソフトウェアを作るべきかを理解するには、ソフトウェア開発の目的と背景を理解することが必要です。事業方針は何か、そしてソフトウェア開発によってどういう価値を手に入れようとしているかの理解です。

 この章では、事業活動とその構造を理解するためのドメイン駆動設計の考え方とやり方を学びます。つまり、事業活動を業務領域に分解し、三つのカテゴリー(中核補完一般)に分類する方法です。この第1章の内容がソフトウェア設計の土台となります。そして、次章以降で、ソフトウェアのさまざまな設計判断に、この考え方がどのように影響するかを学びます。 ...

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