7章価値を明らかにしてフローを増やす
やる必要のないことを効率よくやることほど無意味なものはない。
ピーター・ドラッカー
製品開発における実行の評価基準は、その時点における最良の経済的な選択に合わせて、絶えず計画を調整する能力である。
ドナルド・ライナートセンとステファン・トムキ
たいていの企業は、働きすぎという名の海で溺れており、その多くはあまり価値のないものを顧客に提供しています。あらゆる企業は、既存の製品を改善して新製品を届けることだけでなく、複数の取り組みや戦略的プロジェクトを常時動かしており、計画外の仕事に目標の達成を邪魔されています。よく見られる対応策は、稼働率を上げ(もっと懸命に働く)、効率を上げ(もっと速く働く)、時代遅れの非生産的なプロセスでコストを削減しようとすることです。これに対して、リーン思考は実績のある代替手法を提供します。これは、以下の5つの基本原則にまとめられます†1。
それぞれの製品の価値を正確に定義づけること
それぞれの製品の価値の流れを定義すること
よどみのないフローを作り上げること
顧客がメーカーから価値をプルできるようにすること
完全性を追求すること
[†1] [womack]
前の章では、生産性と品質を改善してコストを削減するために、プログラムレベルで継続的改善の戦略を実行する方法を紹介しました。本章では、品質と投資収益率を高めると同時に、新機能のサイクルタイムを50%以上減らすために、Maersk社が5つのリーン原則をどのように適用したかを紹介します。
7.1 Maersk社のケーススタディ
ジョシュア・J・アーノルドとオズレム・ユジェは「Black Swan Farming」†2のなかで、世界最大の海運会社Maersk Linesにおけるサイクルタイム削減の取り組みについて説明しています。Maersk社のIT部門は、年間1.5億万ドルのIT予算を持ち、開発の大半を世界規模で展開する外部ベンダーに委ねていましたが、大量の要求と製品化までの遅さに直面していました。2010年の時点で、機能のリードタイムの中央値は150日、要求の24%が顧客に届くまで(コンセプトの立案からソフトウェアの稼働まで)に1年以上かかっていました。2010年10月の分析では、処理中の4,674件の要求のうち、3分の2以上が「ファジーフロントエンド」に置かれ、詳細な分析と投資の待ち状態にあることが明らかになりました。あるケースでは「開発とテストに82時間しかかからない機能に、合計で46週間もかかっていました。このうち38週間が待ち時間」であり、そのほとんどがファジーフロントエンドに置かれていました( ...
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