1章デザインの役割の変化

変化するということは改善すること、完全であるということは改善を繰り返すことである。ウィンストン・チャーチル

従来、デザイナーとは「美しい絵を作る人」と考えられてきましたが、今、デザイナーの役割が大きく変化しています。UX(User eXperience)の重要性が増し、製品全体の評価を左右する重要な要素と見なされるようになってきたからです。UXという言葉や概念が登場してからまだあまり時間がたっていませんが、意味は大きく変化し、デザインにも影響を与え続けています。

デザイナーにとってとくに重要なのは、組織内で起こった変化です。デザインをひとつの道具として扱う見方は薄れ、製品開発において重要な位置を占めるものと見なされるようになりました。たとえばウェブやモバイルインタフェースは単なる製品のためのプラットフォームから、製品そのものに変化しつつあるのです。こうした変化が、社内、チーム内、そしてステークホルダー(クライアントや上司なども含むプロジェクトの関係者)のデザインに対する見方に大きな影響を与えています。我々デザイナーの仕事が重視される時代が来たわけです。以前から望んでいたとおりのすばらしい時代となりました。このような情況をふまえ、ほかの分野から移ってくる「UXデザイナー」の数は急増しています。

しかしひとつ問題があります。我々デザイナーは、他人に対して、とくにデザイナーではない人(非デザイナー)に対して、デザインに関する事柄を説明するのに慣れていないのです。そこで、「デザイナー以外の人にデザインについて説明する方法」を紹介するのがこの本の目的です。

1.1 私とデザインとの関わり

本題に入る前の準備として、この章では今日まで我々デザイナーがたどってきた道を振り返ることにします。その第一歩として、そもそも私が現在の仕事をするに至った経緯を紹介しましょう。私自身ステークホルダーに対してデザイン上の決定事項を説明するさまざまな経験をしてきて、その経験が、「デザインとは何であるか」を理解をする上でとても役に立ってきたのです。そしてその過程でコミュニケーションがいかに大切かを痛感してきました。 ...

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