12章非デザイナーのみなさんへ
目に映るものの捉え方は、各人の関心の有り様によって変わる……。同じ野原を前にしても、農業従事者なら作物となり得る草木に目が行くし、地質学者なら化石に、植物学者なら草花に、画家なら色彩に、スポーツマンなら自分たちの種目に必要なスペースに着目する。同じものを目にしても、同じものが見えるとはかぎらないのだ。サー・ジョン・ラボック†1
[†1] (1834−1913)。英国の准男爵。銀行家、政治家、生物学者、考古学者。著書『The Beauties of Nature and the Wonders of the World We Live in, 1913』(邦訳:板倉勝忠訳『自然美と其驚異』<1933年、岩波文庫)
組織の中でデザインの有効な議論のコツを身につけたいと願っているのはデザイナーだけではありません。デザインチームのメンバーとの間にコミュニケーションギャップを感じているステークホルダーは組織の各層におり、それを解消したい、共により良い製品やサービスを生み出したいと模索を続けています。現代の組織がデザイナーにとって必ずしも居心地の良い職場でないことは周知の事実です。とくにデザイナーとエンジニアの意見が噛み合わない時には、すきま風が吹きがちなのです。
私は以前から様々な人に相談を持ちかけられてきました。デザインチームのメンバーからは「(ステークホルダーの人たちと)もっとうまく連携するにはどうしたらいいんでしょう?」と、また、役員の人たちからは「デザイナーと協力して仕事をスムーズに進める秘訣を教えてもらえませんか?」と。こういう人たちが、力を合わせることの意義を理解していることは確かですし、テクノロジー主導の部門でしかるべき協力態勢を維持する上で欠かせないのが「的確で有効なコミュニケーション」です。にもかかわらず、たいていはまさにそのコミュニケーションの不備のせいでチームのメンバーが腹を立てたり戸惑ったりして足並みを乱してしまいます。コミュニケーションの不備が「期待はずれ」を招き、期待はずれが失望や不信感を生むのです。こんな事態はぜひとも防がなければ! ...
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