1章新たな冒険
怖いと感じたなら、それはやってみる価値があるものかもしれない。
――セス・ゴーディン
IDカードを取り出して確認します。写真は少し残念でしたが、幸いにも名前の綴りは間違えられていないようです。ポケットにしまったところで到着です。1日目の始まりです。
「ようこそ!」と言いながら握手を求めて近づいてきた人物がいます。力強く手を握る女性はリサ、あなたの上司となる人です。
リサのあとについて、パーティションのない開放的なオフィスを見て回り、新しい職場の景色や音に触れます。キッチンを通ると、エスプレッソマシンがフォームミルクを作る音や、新しい同僚のおしゃべりが耳に入ります。ピンポン球がガラスの仕切り壁に当たって跳ね返りました。電動スクータに乗った男性とすれ違います。前の職場とは正反対です。
オフィスの真んなかには、赤いベルベットのロープで囲われたホワイトボードがあります。リサはくるっとそちらを向きます。あなたは困惑したように見えます。理解不能な数式がびっしりと書き込まれていて、右下には、いろいろな人のサインがあります。リサはそれを指差しました。
「この会社を生み落としたアルゴリズムなの。サインは創設者たちのもの。こんなに美しい計算式がユニコーン企業を作るなんて、誰も想像しなかったでしょうね」
あなたはその意味を理解したふりをして、うなずいて笑顔で返します。
リサは壁一面がガラスになっている窓のほうに向かって歩き続けます。空いたデスクに向かって一直線に向かうのが見えます。彼女はこれがあなたの椅子だと指差しました。
リサは「座って。すぐにミーティングに行かなければいけないんだけど、必要ならいつでもDMで知らせて。またあとで顔を出します」と言います。
「承知しました、ありがとうございます」とあなたが返事をすると、リサは1枚のホワイトボードの裏に走り去ります。オフィスの中心にあったホワイトボードとは違って、複雑な数学記号で埋め尽くされてはいません。その代わりに、恐ろしく下手くそな馬の絵が描かれており、その下に何か書いてあります。目を細めると、 ...
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