8章ゲームオーバー

ありがとうマリオ、でもピーチ姫は別の城にいるんだ。

――トード

メールを書いていると、左から誰かが自分のほうに近づいてくることに気づきました。最後まで書き終えて送信ボタンを押すと同時に、椅子を回転させてその人に顔を向けます。やって来たのはサムです。

「どうしたんです?」

「ちょっと時間をもらえますか?」 彼女は答えました。

「もちろん。話って何でしょうか?」

「部屋で話してもいいですか?」

あなたはうなずいて立ち上がり、会議室のドアを見回します。

「フェルマーの会議室が空いてますね」 オフィスの角を指差しながらあなたは言います。そして、2人はそこに向かって歩き始めます。

「ここで大丈夫ですか?」 あなたは尋ねます。

「ええ、ちょっとお話したいことがありまして」 サムは答えます。

彼女が部屋に入り、あなたも続きます。ドアを閉めて、電気をつけます。あなたは、サムがテーブルの席についていないことに気づきます。彼女の態度は落ち着かない感じです。居心地の悪い静寂が続きます。サムは口を開きます。

「会社を今月末で退職したいと思います」

あなたは自分の頬が赤く染まるのを感じます。

「退職? どうしたんですか?」

「他社のオファーを受けていたのですが、今朝それに返事をしました。1か月以内に全部片づけて、来月の1日から新しい会社で働きたいと思っています」

こんなことになるとは思っていませんでした。何と言ったらいいかまったくわかりません。頭のなかで必死に言葉を探します。

「残念です……。ここにいるあいだに必要なものがあれば知らせてください」

サムはうなずきます。「わかりました」と彼女は言います。そして、微笑んで部屋を出ていきます。

あなたはすぐに自分が愚かだったと感じます。なぜ彼女がどこに行くかを聞かなかったのか? ...

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