15章デュアルラダー

登りたい梯子の下にいるほうが、登りたくない梯子の上にいるよりましってことね?

――デイブ・エガーズ

木曜日のことです。仕事を終え、オフィスからほど近い喫茶店の席にいます。チャーリーがカンファレンスに参加するためにこの町に来ていて、大学以来ひさびさに会うのです。飲み物が運ばれてきました。

「仕事はどう?」と尋ねます。「2か月前にメールをやりとりしていたときは、すごくおもしろい音声配信APIの仕事をしているって言ってたけど」

チャーリーは「良くも悪くもだね」と答えます。

「どういうこと?」

チャーリーはテーブルを見つめ、「良い話としては、ついに昇進できたってことだ」と言います。

「へぇ、すごい! おめでとう!」とあなたは言います。

「チームのマネジメントをしているんだ」

「いいね! 素晴らしい。でも悪い話っていうのは?」

「まあね」 チャーリーは続けます。「そもそも自分がマネージャーになりたかったのかがわからないんだ。でも10年も待たずに昇進するには、それが唯一の方法に思えたんだよ」

「え? 何があったの?」

「前のマネージャーが会社を辞めたんだけど、次の人を外から雇うお金がなかったんだ。だから自分を昇進させたってわけ。実にあっという間の出来事だった。自分が何に足を踏み入れようとしているのか、自分でもわかっていなかったと思うんだ」

「上司と話す機会はなかったの? 何か言ってた?」

「さあね。上司は今は国内にいないんだけど、この件で起きていることについて、表面的なレベル以上のことを話せる感じではなかったんだ」

あなたはコーヒーをすすり、「それは最悪、気の毒に。自分もまだ新しい仕事で模索中だけど、いつでも喜んで話を聞くね」と言います。

「感謝するよ。どうもありがとう。ただ、後戻りできない選択をしたかはわからないんだ。自分がこの仕事をやっていることについては、チームはよく思ってくれていそうなんだけど、自分が何もやれていない気持ちになる。前みたいに仕事が楽しくないんだ。ものを作るのが懐かしいよ」 ...

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