2章
UX戦略の4つの基本要素
兵貴勝、不貴久
(兵は勝つことを貴ぶ。久しきを貴ばず。
戦争は勝利を第一とするが、長びくのはよくない)。
優れたUX戦略は、人々のメンタルモデルを一新して市場を破壊的にひっくり返すための手段だ。わざわざ時間とエネルギーを使って没個性的なデジタルプロダクトを作ったところで何になるだろうか。最低限、今市場に出回っているソリューションよりもずっとよいものを作るのでなければやる意味がないだろう。
そのような優位性を実現するには、すべての点を結びつけて密度の濃いUX戦略を構築するための枠組み(フレームワーク)が必要だ。この章では、本書のツールとテクニックを身につけるために理解しなければならないもっとも重要な基本要素を説明する。これらは、あなたとチームがUXストラテジストのように思考するための下地のようなものだと考えてほしい。
2.1 | 私はどのようにして自分独自のUX戦略の
フレームワークを発見したか
デジタルの世界では、戦略は発見フェーズから始まるのが普通だ。発見フェーズとは、チームが調査を深く掘り下げていった結果、作りたいプロダクトをめぐる重要な情報を見つけ出す段階のことである。私は、この発見フェーズをアメリカの弁護士が公判開始前に行う証拠開示手続きのようなものだと考えている*3。法廷での「不意打ち」を防ぐために、弁護士は相手側に証拠を見せるよう要求できる。そのようにして、十分な反証を準備するのである。弁護士が不意打ちを防ぐために準備するのと同じように、プロダクト製作者も戦略的に準備すべきだ。
私が初めてUX戦略を実践する機会を得たのは、2007年のことだ。当時、私はSchematicというデジタル代理店(現在のPossible)のUXリーダーとしてOprah.com(俳優、テレビ司会者のオプラ・ウィンフリーのサイト)のデザインをリニューアルする仕事をしていた。私はほかのチームリーダーたちとともにシカゴに飛んで発見フェーズの作業に取りかかった。 ...
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