ご覧のように、途中のどの場所でも、自分がどこにいて、次に何をしなければならないかがわかる。そして、市電1本、地下鉄2本と短い歩きでどれだけかかるかもほぼ正確にわかった。移動中は手のなかのアプリが無駄なく移動するために電車のどのあたりで座るとよいか、どの駅で下りるかを教えてくれる。Citymapperは、もう何年も前から私の生活にとって欠かせない存在になっている。
Citymapperのようなプロダクトは、固定されたビジネスプラン、1週間のデザインスプリント、2週間のUX発見フェーズといったもので作られたのではなく、数か月あるいは数年の実験と失敗を繰り返しながら今の姿に育ってきている。戦略的な紆余曲折が知見を生み、見事なプロダクトデザインとして花開いたのである。創業者と開発チームは、目に見えないところでリスクを引き受けつつ、プロダクトのビジネスモデルの要素を組み立ててきたのだ。彼らは戦略を磨いて顧客からの熱烈な支持を獲得した。
本書全体を通じて、ほかにもフリクションレスなUXを備えたプロダクトを取り上げていく。これらは幸運やアイディエーションセッションや「天才的なデザイン」によって「偶然」生まれたUXデザインではない。4つの基本要素を備えることによってフリクションレスになったのである。目に見える部分とそうでない部分の総和としてプロダクトを理解するようになるためには、実践と意識の集中が必要だ。
2.6 | まとめ
UX戦略で大切なのは経験則だ。完璧なプランを組み立てて遂行することではない。今あるものを調査し、機会領域を分析した上で、人々が本当に望むような価値あるものを作り出すまで、仮説のテスト、失敗、学習を繰り返せるかどうかが決め手になる。リスクを引き受け、失敗を受け入れる必要がある。本書のこれからの部分では、UX戦略がチームを正しい方向に導いていることを検証するために、すぐに実験して賢く失敗を積み重ねる方法を学んでいく。 ...
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