7章
プロトタイプによる実験
誤った戦略を追求して準備不足なのに多額の資金をつぎ込んではならない。
実験で確かめるというマインドセットが必要だ。*1
──クレイトン・クリステンセン
リーンスタートアップは、正しい路線を進んでいることを確認するために、早い段階から頻繁にフィードバックを得ることを前提としており、これは基本要素3の検証をともなうユーザー調査の基礎でもある。エリック・リースとスティーブ・ブランクは、できるだけ早くプロダクトの実験をすることが大切だと強調している。このような「早い段階で学ぶ」という考え方は、今では既存の大企業でも見られるものだ。チームに5営業日を与えてソリューション案のプロトタイプを作成、テストさせるGoogleデザインスプリントが広く導入されているのがその証拠である。
UX戦略を成功させるためには、時間をかけない実験により、人々が本当にほしがっているソリューションを届けているという確証を得る必要がある。そこで、ストーリーボードからMVP(Minimal Viable Product)やプロトタイプに急いで乗り換えなければならない。これからの章の実験では、それらを使う。そうすれば、チームの最新の推測が正しいかどうかを可能な限り早く知ることができ、実世界でビジネスモデルを機能させるために何が必要なのかという現実に否応なしに直面させられる。プロトタイプの準備に入るここからは、UX戦略の4つの基本要素をすべて同時に扱うことになる([図7–1]参照)。
7.1 | 全力を尽くすこと
4章で取り上げた父の失敗に終わったホットドッグスタンド購入よりも前に、私は母がサンフェルナンドバレーの自宅ベッドルームのクローゼットからビジネスを起こして成功させたところを見ていた。1970年代始めのことで、35歳だった母はテニスに恋をした。70年代のアメリカはテニスの時代だった。ジョン・ニューカム、ケン・ローズウォール、クリス・エバートといった選手がウィンブルドン、全米オープン、全仏オープンのテレビ中継に登場し、人気が加熱した。全米各地で裏庭にテニスコートが作られ、市民教室に本格的なテニスの講座が加わり、トーナメント試合が次々に新設された。晴れの日が多い南カリフォルニアでは、テニスはアッパーミドルクラスの人々のライフスタイルに欠かせないものになった。私は小学校に通っていたが、母はまだよちよち歩きの弟の手を引いて地元の公園にレッスンを受けに行っていた。彼女には天性の才能があり、強烈なスライスリターンを身につけて、レッスン開始6か月後には、女子ダブルスのトーナメントで最初のトロフィーを勝ち取った( ...
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