2章対話を改善する
フィーチャー工場からの脱却に向けた鍵となるのは人間関係です。そこで本章では、そうした人間関係を構築するうえで欠かせない5つの重要な対話についてあらかじめ解説します。それが「信頼を築く対話」、「不安を乗り越える対話」、「WHYを作り上げる対話」、「コミットメントを行う対話」、「説明責任を果たす対話」です。ただし、これら具体的な対話に深く踏み込む前に、対話の診断方法とそのスキルの習得方法を理解することが重要となります。なぜ対話が人類固有の超能力と言えるのか、そしてその力を効果的に活用するにはどうしたらよいのか、学習と実践を通して身につけましょう。
この章では対話を改善するうえで大きな課題となる「行動と信念の不一致に気づかない」問題について説明します。この問題に対処して自己認識を高めるプロセスが「4R」です。最後に、このプロセスを実際に体験できるように対話例をいくつかご紹介します。
4Rの基礎を身につけたら、第Ⅱ部に進んでそれぞれの対話の進め方を学びましょう。
2.1 対話:人間の秘密兵器
2.1.1 我々の持つ特別な力
ユヴァル・ノア・ハラリは、著書『サピエンス全史』(河出書房新社、2016年)の中で、人類が地球上で支配的な種となった理由を探っています。ハラリはその答えを「動物の中でも人間は特別なコミュニケーションを行っている」という点に求めます[35]。
多くの動物は「ライオンから逃げろ!」と、吠え声や鳴き声、動きで伝えられます。さらに、人間や動物のコミュニケーションは同じ種族の仲間に関する情報を共有する必要性、つまり「噂話」の必要性から発展してきたと考えられています。噂話をすることで、社会的動物である人間はお互いを理解して評判を築けるようになり、その結果としてより大きな集団を作ってより細やかに協力しあえるようになったというのです。実際、他者を理解すること、つまり「心の理論」を身につけることは非常に重要であり、哲学者のダニエル・デネットは、『心の進化を解明する:バクテリアからバッハへ』(青土社、2018年)の中で、私たち自身の意識は他者の心を理解することの副産物として生じたと主張しています ...