6章組織のスケーリング:ソフトウェアアーキテクチャの中心的役割

João Rosa

私は、ソシオテクニカルシステム†1と複雑系理論†2の研究者です。心はソフトウェアエンジニアでありつつも、人と技術、そして根底にあるプロセスが交差するところ、すなわちソシオテクニカルシステムから生じる難題に魅了されています。自分が属するシステムに貢献し、良い影響を与えられたなら、私は毎日をいきいきと過ごせます。CTO(最高技術責任者)やCPTO(最高プロダクト技術責任者)は、ソシオテクニカルシステムを理解し貢献することで、周囲の人々やチームがそれぞれの専門分野で卓越した能力を発揮できるようになると信じています。

[†1] 訳注:組織開発において、複雑な組織作業の遂行を人(social)と技術(technical)の相互作用によるシステムとして設計するアプローチを指します。

[†2] 訳注:複雑系(多くの要素が複雑に絡み合って成り立っているシステム)に関する研究分野。

私は、ソフトウェアエンジニア、マネージャー、ソフトウェアアーキテクト、コンサルタント、CTOなど、さまざまな職務を経験することで、ソフトウェアアーキテクチャの実践を積み重ねてきました。得意とするのは、人々の生活に変化をもたらすようなデジタル企業に貢献することです。具体的には、主にスケールアップ企業、つまり自社プロダクトが市場に受け入れられ、複数の市場へのスケールアップやプロダクトの立ち上げを検討している組織と仕事をしています。私は本章をCTOの目線から書いています。つまり、目標への進捗をどのように計測するかということを戦略実行の視点から説明します。それにより、ソフトウェアアーキテクチャやメトリクスの概念を、それらが影響を及ぼす事物と結び付けられます。この包括的なアプローチは、組織全体が一貫した体験を提供することを可能にします。従業員が組織の決定を理解できるようになり、その活動は、絶えず変化するソフトウェアアーキテクチャ(本章を読めば分かる通り、アーキテクチャとは静的なものではありません)により支えられるようになります。本章がそうした取り組みのヒントになれば幸いです。本章では、架空のキャラクターであるAnnaが、ソフトウェアアーキテクチャとメトリクスを結びつける旅を書いていきます。コンテキストはそれぞれの環境で異なるものですから、詳細な進め方を押し付ける意図はありません。むしろ、適したメトリクスを見つけ、計測し、アーキテクチャ上の決定に結びつけるためのアプローチを提供したいと考えています。 ...

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