7章ゲームはアイデアから始まる
あなたが自分のゲームをゲームデザインしようとするときに、本書が何らかのひらめきを提供できたら嬉しいです。ゲームデザインする際に(もうゲームデザインをしたことがあるかもしれませんが)、自分がやっているのは正しい方法ではないのではないか、「本物の」ゲームデザイナーの手法を使っていないのではないか、と思うかもしれません。わたしの推測では、あなたがゲームデザインするときの方法は、次のような流れではないでしょうか。
- アイデアを考える。
- それを試す。
- これでよいと思えるまで、アイデアを変えてテストを続ける。
素人っぽく聞こえますよね。実を言うと、本物のゲームデザイナーもこれと同じことをやっているのです。本章の内容はこれに尽きます。でも、よりよい方法があるのも事実です。やるべきことが何かは変わりません。本章と次章では、できるだけ上手なやり方について話していきます。
7.1 ひらめき
前述のとおり、わたしは数年間、プロのジャグラーをしていました。芸のレパートリーが2つしかなかった14歳くらいの頃、初めてジャグリングフェスティバルに参加しました†1。参加したことのない方に言うと、それは一見の価値のある光景です。参加者のほとんどがさまざまなスキルや能力を持ったジャグラーで、大きな体育館に集まって、新しい技の話をしたり、試したり、共有したりしていました。到底不可能な難度の技に挑戦でき、失敗して落としても恥ずかしくない、そういう場でした。しかし、初めて1人で参加したわたしは、到底そんな気にはなれませんでした。ものすごく不安でした。そもそも、「本物」のジャグラーではなかったのですから。わたしは、ポケットに手を入れて、目を見開き、ずっと歩き回っていました。誰かから「おい、こいつはここで何しているんだ?」と大声で指差されるのを恐れていました。もちろん、そんなことにはなりませんでしたが。フェスティバルにいた誰もがわたしと同じように独学で学んでいました。その後慣れてきたわたしは、恥ずかしそうにお手玉を取り出し、少し練習しました。わたしは他の人の芸を観察し、真似ようとしました。うまくできるときもありました。しかし、参考になりそうな芸をもっと探そうと見回したとき、ひときわ目立つジャグラーがいることに気づきました。淡い青色のジャンプスーツを着た老人で、彼の芸は他の誰の芸とも全く異なっていました。老人は独特なパターンとリズムを使っていて、難易度は決して高いものではありませんでしたが、ただただ美しい芸でした。老人の芸を長い時間眺めていて、あることにやっと気づきました。特別で独特に見える彼の芸のいくつかは、わたしにもできる芸だったのです。同じ芸でも彼がやるとそこには別の作風や感覚があり、全く新しいもののように思えたのです。わたしは20分ほど彼を見ていました。すると突然わたしを見て、「さてと」と言いました。 ...
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