10章体験はプレイヤーの脳内で起こる
ここまでお話ししてきたように、結局のところ、ゲームデザイナーが作り出すのは体験です。体験が起こり得るのは、たった1つの場所だけです。それは、人間の脳です。人間の脳を楽しませるのは簡単ではありません。脳はとても複雑だからです。人間の脳は、広い宇宙を見渡しても、最も複雑な物体です。
さらに困ったことに、わたしたちは脳の働きのほとんどを解明できていません。
この文章を読むまで、自分の足の位置や呼吸の回数、ページの上を目線がどう動いているかについて、意識していましたか? そもそも、ページの上を目線がどう動くかを知っていますか? 目線は等速で直線的に動くのでしょうか? それとも、ぴょんと飛び跳ねるように動くのでしょうか? 確信を持って答えられないのに、今までずっと本が読めていたのはどうしてでしょう? 話をするとき、言おうとしていることを、口にする前に本当に把握していますか? ものすごいことですが、人が車を運転するとき、道路の湾曲率(曲がり具合)を観察して、適切な回転角に変換してハンドルを動かしています。この計算は誰がしているのでしょう? そもそも、道路の湾曲率に注目した記憶はありますか? また、「ピクルス入りのハンバーガーを食べているところを想像して」という文章を読むだけで、唾液が出てくるのは、どうしてでしょうか?
次のパターンを見てください†1。
[†1] ジュリアン・ジェインズ著『神々の沈黙―意識の誕生と文明の興亡(原題:“The ...
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