11章プレイヤーの脳はモチベーションによって動かされる
本章ではまず、つらい真実に向き合うことから始めましょう。
ゲームは、重要ではない。
もちろん、わたしたちはゲームを遊ぶのが好きです。ゲームについて考えるとワクワクしますし、ゲームを遊べば、記憶に残る素晴らしい体験を得られます。しかし、人生という大きな視点で考えると、もっと重要なことに取り組めるはずです。事実、これはエンターテインメント全般について言えることです。どんなエンターテインメント体験であれ、目標はすべて同じで、どうでもよいこと(例えばボールを輪っかに通すことや、想像上の動物の物語や、このカードがキングかエースか、など)を、さも重要であるかのように見せることです。これは詐欺でしょうか? いいえ、違います。結局のところ、わたしたちは「ただのゲーム」だときちんと理解しています。しかし、ゲームの最中は、ゲームがもっともっと重要なものだと感じさせる何かが起きているのです。何かが、どうでもよい些細な体験を気に掛けるように強要し、駆り立てます。まるで生きるか死ぬかの大問題であるかのように感じさせるのです。これがモチベーションの魔法です。人はなぜそれをするのかという問いは、哲学として語られるほど古くからある問いです。一方で、ゲームデザイナーたちが、人間のモチベーションについて特別な洞察力を持っていることは間違いないでしょう。
実のところ、モチベーションに対するゲームデザイナーの理解は、まだまだぼんやりとしています。そして、ぼんやりした不鮮明さが、ゲームデザインを難しくしています。ほとんどのゲームデザイナーは、心理学の複雑性に習熟するというよりも、直感と実験に頼ってモチベーションの仕組みを作り上げていきます。そしてときどき、偶然成功します。しかし、モチベーションについての知見は、どんなことでも役立つ可能性があります。これは、心理学者の研究とゲームデザイナーの目標が一致する珍しい領域の1つです。ですから、この点から始めましょう。 ...
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