ゲームデザインバイブル 第2版 ―おもしろさを飛躍的に向上させる113の「レンズ」

13章ゲームシステムにはバランスが必須

図13-1　　

悪いバランスは、神に嫌悪される。

—— 箴言 11:1

絶対におもしろいはずだと信じて疑わなかったゲームが、実際に遊んでみたら驚くほどつまらなかったという経験はないでしょうか？ おもしろそうなストーリー、自分の好きなタイプのゲームプレイアクション、最新技術、そして美しいアートワークといったすべてを備えたゲームでも、遊んでみると、退屈だったり、混乱したり、イライラすることがあります。このようなゲームは、バランスが悪いのです。

経験の浅いゲームデザイナーには、ゲームのバランスをとることは、とても謎めいて見えるでしょう。しかし実際のところ、バランスをとるためにすることは、「作り出したい体験を提供できるようになるまで、ゲーム内の各要素を調整する」だけです。バランスをとる作業は、科学からはほど遠いものです。簡単な数学はよく使いますが、一般的にはゲームデザインの中でも最も芸術に近い領域として見なされます。すべてのゲーム要素の関係性を細かなニュアンスまで理解し、何をどの程度変更し、何を残すべきか判断することがすべてだからです。

ゲームバランスをとるのがとても難しい理由の1つは、ゲームは2つとして同じものが存在せず、バランスをとるべき対象がゲームごとに異なるからです。ゲームデザイナーは、バランスの調整が必要な要素を識別し、プレイヤーに提供したい体験と完全に一致するまで試行錯誤を繰り返さなければいけません。

この作業は、料理の新しいレシピを考えるようなものです。必要な材料を決めることも大事ですが、それぞれの材料をどのくらい使って、どのように組み合わせるかを考えることも重要です。正確な計算が求められること（例えば、小麦粉1カップの発酵に必要なベーキングパウダーはティースプーン1.5さじ）もありますが、多くの場合（例えば、砂糖の量）は個人の好み次第です。有能なシェフが作るレシピは、シンプルでありながら素晴らしい料理を生み出します。同様に、優れたゲームデザイナーは、シンプルだけど遊ぶと楽しいゲームを作れます。どちらも、素材のバランスのとり方を心得ているのです。 ...