21章世界には空間がある
あれ、ちょっと待ってください。空間の話は、「12章 一部の要素はゲームシステムである」で取り上げましたよね? そうなのですが、そうでもないのです。機能的空間の考え方についてはお話ししましたが、機能的空間は、ゲーム空間の骨格にすぎません。この章では、プレイヤーが実際に体験する、肉付けされた空間について解剖していきます。
21.1 建築物の目的
雨の日に庭で野宿しても構わないなら、フランク・ロイド・ライト設計の家を建ててもよいと思いますよ。
——Aline Barnsdall(エイリーン・バーンズドール)
「建築物」と聞くと、何を思い浮かべますか? たいていの人は、大きな建物を想像します。特に、変わった形状の現代風のビルです。建築家の主な仕事は、ビルの外見に彫刻を施すことだと考える人さえいます。そういう人たちは、美術館で彫刻を眺めて楽しむのと同じように、素晴らしい建築物として称賛されるのは人々が楽しめる形状をしたビルだと考えています。
外見の形状が建物の1つの側面であることは事実ですが、建築物本来の目的に対してはほとんど関係がありません。
建築物の主な目的は、利用者の体験を操作することです。
人が望む体験をすべて自然界で簡単に得られるなら、建築物は不要です。しかし、人が望む体験が常に自然界で得られるわけではないため、人が望む体験を得る助けになるものを、建築家がデザインするのです。日陰や乾燥を体験したくて、小屋を建てます。安全や安心を体験したくて、頑丈な壁を作ります。家、学校、ショッピングモール、教会、オフィス、ボウリング場、ホテル、美術館……。これらを建てるのは、外から眺めたいからではありません。これらの建物によって、求めている体験が手に入るからです。そして、これらの建物について「上手にデザインされた」と表現するときは、外見について話しているわけではありません。その建物が、内部でどれだけ素晴らしい体験を作り出せるかについて話しているのです。 ...
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