28章チームは技術を使ってゲームを構築する
サミュエルがやって来たとき、トムは図を描いていました。サミュエルは図を見て、「何を描いているんだ?」と聞きました。
「馬からいちいち降りなくても済むような、門の開閉器を作りたいんだ。これは扉の掛け金を開けるための引き手だよ」
「何を使って開けるんだ?」
「強いばねでやろうと思う」
サミュエルは図をじっくり観察しました。「じゃあ、閉めるには何を使うんだい?」
「この棒だよ。ばねの方に動いた後、反対方向に力が加わるんだ」
「なるほど。門が完全に宙にぶら下げてあれば、うまくいくかもしれないな。20年間、馬から降りて門を開け閉めしていた時間を考えると、その2倍くらいの時間で、この仕組みを作って維持できるかもな」
トムは父親の皮肉に反論しようとしました。「馬が暴れるときには便利だし……」
サミュエルは「わかっているさ。それに、これを作りたい本当の理由は、ただ楽しいからだろう」と言いました。
トムは笑って、「そのとおり」と言いました。
——ジョン・スタインベック著『エデンの東(原題:“East of Eden”)』より
28.1 ついに、技術の話
機械は人を自然界の深刻な問題から解放してはくれない。むしろ、さらに奥深くへと引きずり込む。
——アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ
デジタルゲームのゲームデザイン解説書を名乗る本で、ほぼ終盤まで技術について触れてこなかったことを奇妙に思われるかもしれません。ちゃんと理由があります。ゲームデザイナーの人生において、技術は大きくのしかかってきます。太陽が出ているときに星について学ぶのが難しいように、技術が目の前にあるとゲームデザインを学ぶのが難しくなります。技術は常に革新的で、常に大きな驚きを秘め、常に新たな課題をもたらします。ゲームデザインの四大要素(技術、ストーリー、ビジュアル、ゲームシステム)の中で、技術は最も変動的で、最も不安定で、最も予測困難です。呼んでもいないのに、酔っ払った億万長者がパーティに登場するようなものです。何をしでかすか予想もつかないので、全員の目が彼にくぎづけになります。さて、本書も終わりに近づいてきましたし、そろそろ太陽の光の中に飛び込み、酔っぱらった億万長者に会いに行きましょう。 ...
Get ゲームデザインバイブル 第2版 ―おもしろさを飛躍的に向上させる113の「レンズ」 now with the O’Reilly learning platform.
O’Reilly members experience books, live events, courses curated by job role, and more from O’Reilly and nearly 200 top publishers.