31章ゲームデザイナーとクライアントがゲームに求めるのは利益である

 

図31-1  

31.1 愛と金

もう1つのつらい真実を、お伝えすべきときが来たようです。

あなたがゲームデザインをするのは、ゲームへの愛によるものですよね。それは、わたしもよくわかっています。ゲームデザインでお金を稼げなくても、趣味としてゲーム作りをするのではないでしょうか。実際、「アマチュア」という単語は、「愛好家」を意味します。

しかし、お金はゲーム業界を動かす燃料です。

ゲームが金儲けの道具でなければ、業界は衰退し、死に至ります。

そしてゲーム業界の現実として、もしゲームの代わりに缶切りを売るほうが利益が2%高いなら、喜んで缶切り業界に転職する人がたくさんいます。

そういう考えの人々を、軽蔑する人もいるでしょう。しかし、軽蔑すべきでしょうか? 業界にとって、利益は不可欠です。利益に関する責任者として誰よりも適任なのは、お金を愛する人ではないでしょうか? そもそも、あなたは毎日毎日お金の心配をしたくないですよね? あなたには、ゲームデザインの仕事があります。お金の計算が得意な人にお金の責任者となってもらい、ゲームデザインが得意な人間がゲームデザインの責任者になれば、全員が幸せになれますよね?

しかし、悲しいことに現実は違います。「形態は予算に従う」を覚えていますか? お金担当者による意思決定は、ゲームデザインにきわめて大きな影響を与えます(「あなたはこのゲームの開発に45万ドル欲しいと言っていますが、20万ドルで作る必要があります」「月額課金制ではなく、少額課金による収益構造のゲームにすることが決まりました」「ゲーム内広告を入れてください」)。そして、この逆もあり得ます。ゲームデザイン側の意思決定は、収益性に非常に大きく影響します。ゲームデザインと経営は、奇妙な形で絡み合ったあやつり人形のように、お互いの運命の糸を操作し合っています。そのため、お金担当の人々はゲームデザインに首を突っ込み、どんなゲームデザインにするべきかを指示してきます。ゲームデザインが収益性に与える影響の大きさをゲームデザイナーがちゃんと理解しているか不安になるからです。もし、両者の意見が衝突したとき、どちらが勝つと思いますか? ...

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