11章クラウドコンピューティング

クラウドコンピューティングの普及により、パフォーマンスの分野では、解決される問題もあれば、新たに現れた問題もある。クラウド環境は、オンプレミス(企業内)データセンターのように構築、管理のオーバーヘッドがかからず、瞬時に作り、オンデマンドでスケーリングできる。必要に応じてサーバーの一部を複数のユーザーが使えるため、デプロイの粒度もよくなる。しかし、クラウドには、仮想化テクニックがパフォーマンスに加えるオーバーヘッドや近隣のテナントとのリソースの競合といったオンプレミスにはない独自の難しさもある。

この章での学習目標は次の通り。

  • クラウドコンピューティングアーキテクチャとそれがパフォーマンス上どのような意味を持つかを理解する。
  • ハードウェア仮想化、OS仮想化、軽量ハードウェア仮想化という仮想化のタイプを理解する。
  • I/Oプロキシの利用やチューニングテクニックを含む仮想化の内部構造を頭に入れる。
  • 個々の仮想化タイプのもとでさまざまなワークロードのオーバーヘッドがどうなるかについての生きた知識を仕入れる。
  • 使われている仮想化方式の違いによってツールの使い方のどのように違うかを理解して、ホストとゲストのパフォーマンス問題を診断する。

クラウドのパフォーマンス分析には本書全体が関わっているが、この章では、クラウド固有のパフォーマンス問題だけを取り上げていく。具体的には、ハイパーバイザーと仮想化の仕組み、ゲストにリソースコントロールが適用される仕組み、ホスト、ゲストからの可観測性などである。一般に、クラウドベンダーはそれぞれ独自のカスタムサービスやAPIを提供しているが、本書ではそれには触れない。個々のクラウドベンダーが提供しているそれぞれのサービスについてのドキュメントを参照していただきたい。 ...

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