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12章オンライン広告における機械学習

本章ではオンライン広告を題材にして、意思決定システムにおける予測モデルの役割や運用と意思決定のデザインについて見ていきます。

オンライン広告配信システムは広告リクエストを受けたタイミングでリアルタイムに推論を行い、その推論結果を利用して即座に最適な行動を取る必要があります。予測と意思決定の間に時間猶予がないため人間は介在できません。それが1日に何十億もしくは何百億回とあります。この要件の元では意思決定の判断材料となる予測と、予測を元にした意思決定の2つの機能が必要になります。自動運転車のような周囲の状況にあわせて自律動作するシステムをイメージするとわかりやすいかもしれません。

今回は広告主向けの広告配信プラットフォームにおける配信ロジックを取りあげます。ビジネス要件から最適な行動とは何であるかを考え、数式に落しこんで実装可能な形にしていきます。

12.1 オンライン広告のビジネス設定

インターネット業界を経済面で支える存在の1つがオンライン広告です。現代人はWebサイトの閲覧やモバイルアプリの利用に多くの時間を費しており、人々の注意を引きつけたいと願う情報発信者にとってそれらは重要な媒体となっています。同時にWebサイトやモバイルアプリの運営者は広告を表示する場所を提供することで運営に必要な収益を得ています。この場所は広告枠と呼びます。広告による収益の例としてFacebook社の2018年の売上は550億ドルで、年次報告書には「マーケッターへの広告枠の販売で実質的な収益のすべてを得ている」と書かれています1。みなさんがWebページを閲覧している裏では常に広告枠の取引が行われているため、身近なところにある機械学習適用事例と言えます。オンライン広告の登場人物を整理すると、人々の目に触れるWebサイトやモバイルアプリは ...

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