3章信頼を築く対話

信頼関係の構築はチームがテイラー主義的なフィーチャー工場から抜け出し、高いパフォーマンスを発揮できる組織文化を築くための最も基本的なステップです。従業員が誠実に行動していないと考える経営者は、コミットメントを受け入れることはできないし、コミットメントを果たせるようサポートすることもできないでしょう。チームから情報を隠す技術リーダーは不安を克服することはできません。また、同僚が本音を隠しているのではないかと疑っている開発者やプロダクトマネージャーは、自らのWHYをうまく提案したりそれについて合意したりすることができません。

信頼はこの後に登場する対話を成功させるための絶対条件です。いわば「信頼の取扱説明書」とも言える本章では、まず信頼がどのように築かれるのかを調査し、どのような対話で破壊されてしまうのか、築くためにはどのような対話をすべきかを分析し、「信頼を築く対話」をするための効果的なレシピを扱うことにします。

本章を読めば次のスキルを習得できます。

  • 解釈ストーリー†1の不一致を見つけることで、信頼関係が築けていないことに気づく。
  • 弱みを見せて言動を一致させることで、自己開示を続けて信頼を構築する道を拓く。
  • 「人のためのテスト駆動開発」を使って他者理解を目指し、思考の組み立ての違いを発見してお互いの解釈ストーリーを一致させる。

[†1] 訳注:ここでの解釈ストーリーとは、起きている出来事に対してそれぞれが自分の頭の中で仕立て上げるストーリーのことを指しています。

3.1 まずは信頼から

信頼について検討するにあたり、まずは目立たない隠れた場所から始めましょう。これから見ていくのは問題を抱えた架空の技術系スタートアップの幹部たちです。この人たちの苦悩は様々ですが、すべての難題の根底には隠れた問題(信頼の欠如)があることを知る者はいません。 ...

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