5章WHYを作り上げる対話
これまで信頼関係を築いて不安を軽減する術を学んできました。これらのスキルがあれば協業を妨げて課題解決をしにくくする問題に対処し、チームが工場マインドに陥ってしまうことを防げます。最初の目標は成功への障壁を取り除くことでしたが、これから紹介するスキルはチームで前向きに働くための枠組みを構築するためのものです。WHYを構築することで大小様々な意思決定の指針となる戦略的方向性が生まれ、成功への強い動機づけになるのです。自主的な意思決定とチームのモチベーションは協業を重要視しない工場では考慮されませんでしたが、工場から脱却して自律的に運営できるようになるためには不可欠です。
本章で伝えたいことは、チームとして集団行動する原動力を「WHY」として言語化すべきなのはもちろん、その際には関係者全員を巻き込まなければならない、ということです。上から目線や見せかけの協議だけでWHYを押し付ける経営者は百害あって一利なしです。組織の理念を一緒に考えるということは、チーフアーキテクトが次の進化のステップとして旗印を立てることに集中できるということであり、技術責任者が四半期ごとの目標のためにチーム全体を動かすことができるということであり、テスターが次にどのコンポーネントのテストを自動化すべきかを自信を持って決めることができるということなのです。
本章で紹介する手法を身につけたときに何ができるようになるか、次に挙げておきます。
- 本質的な関心事と表向きの主張を区別し、表向きの主張をめぐって議論が行き詰まったときに本質的な関心事に光を当てる。
- 意見表明と問いかけを組み合わせて、自己開示するべく自分自身の見解を共有しながら他者理解を目指して相手の見解に関心を持てるようにする。
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