8章これからのウェブ最適化
ここまで、A/Bテストからスタートしてさまざまな角度からウェブ最適化について考えてきました。アルゴリズムを使い分けることで、さまざまな問題に答えられることが実感できたかと思います。一方で、これまでのウェブ最適化にまつわる説明では、さまざまな暗黙の仮定を置いてきたのも事実です。ここではそれらの仮定をもう一度掘り起こし、そこから新たに見える課題、そして考え得る解法を見ていきたいと思います。
8.1 短期的な評価と長期的な評価
これまでに紹介した最適化アルゴリズムは、ユーザがウェブサイトに訪れた際の即時的な反応を最適化することに主眼を置いていました。即時的な反応とは、ボタンのクリックやページの滞在時間など、ユーザがウェブサイトを訪問したときの振る舞いから計測される値です。商品を紹介するランディングページやソフトウェアのダウンロードページなどでは、ユーザにその場で行動を起こしてもらうことが大事なので、これまでに紹介したウェブ最適化手法と相性が良いと言えます。
しかしウェブサイトによっては、ユーザとより長期的な関係を結んでいきたいものもあります。たとえば検索サービスやメールサービスのように、ユーザが日常的に使うツールとしての側面が大きいウェブサイトを考えてみましょう。このようなサイトで即時的な反応のみに着目したウェブ最適化を実行すると、思わぬ結果を招いてしまうことがあります。
ここでは検索サービスを例に挙げて説明します。検索サービスはユーザの検索クエリに応じた適切な検索結果を表示するとともに、検索クエリと相性が良い検索連動型広告を表示して収益化することが一般的です。ここで、ある検索サービスが今この瞬間の収益を最大化したいと思った場合、どのような施策を打てばいいでしょうか?その最も簡単な方法のひとつは、検索結果ページに表示する広告の数を増やすことです。表示される広告の数が増えれば、それだけユーザの目に留まる広告の数も増えるので、短期的には広告のクリック数が上昇すると考えられます。 ...
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